甘さはひかえめで。
むー…と頬を膨らませていると
「乃々」
すぐ後ろから八神くんの声が聞こえて、
八神くんはなにやら私のリュックを触っていた。
「えっ、な、なに!?」
「開いてたチャック閉めてやったんじゃん。
ついでに俺の連絡先のメモ入れといたから」
わー!なんでそんなことするの!
それ私から連絡しなきゃいけないってことじゃん!そんで私が連絡しなかったら、明日絶対怒るじゃん!
どうやって断ろうか悩んでいたら、
八神くんが目を細めて私を見下ろした。
「……つーか急いでるって、男とデート?」
「えっ違うよ、
一緒に帰るだけ」
「ふーん…」
八神くんが茜くんを睨む。
わ…茜くんも八神くんの意地悪の対象にされちゃう?
茜くんに迷惑をかけるわけには行かないと思って、すぐにこの場を離れようとしたら…。
「そういうこと。
乃々と一緒に帰るのは俺だから」
茜くんにぐいっと腕を引っ張られて、「行こ」と足早に教室を離れた。