甘さはひかえめで。


中学の頃、

私のことを『ゆづきち』って呼ぶ男の子がいた。

彼は、なにかと私に突っかかってきて…


あぁ、そう。言うなれば、入学式の日の燿みたいな感じの人で。


私は、この人のことが苦手だった。


「久しぶりだな。
中学一緒の人、だいたいみんな東高に行ったのにゆづきちは違ったんだなー」

「……え、あ、うん…」

「椎名も一緒って聞いた。
まだ仲良くやってんの?」

「そうだね…」

「じゃあ今日も一緒?」

「今日はいないよ」


ずっと男の子と視線を合わせず返事をしてたら

男の子がちょっと黙って、納得したように『あ~』と呟いた。


「椎名に黙って他の男とごはん食べてるってこと?
だからバレたくなくてオレの顔見ないんだ?」

「そういうわけじゃないよ」


苦手な人の顔見ながら話したくないだけで…

失礼だとは思うけど、苦手なものは苦手なんだもん。

今だって、茜くんにバレたくないんだとか勝手に決めつけてるし、自分に都合よく理由付けするところが嫌い。


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