甘さはひかえめで。


「……っ、なんだよ!
椎名がいなかったら別の男かよ!
そんなビッチだと思わなかった!」


チッ、と舌打ちする男の子。


ビッチだと思われるのも心外だったけど、

このままにしとけばもう飽きてくれると思って、ぎゅっと燿の腕に抱きついた。


「ま、そういうことだからあっち戻ってどうぞ。
あ、あと声でかいから、静かにしてもらえる?お店にも迷惑だし」


先輩が鉄板の上のお好み焼きを見ながら、目を合わせることなく言う。

男の子は『はいはい!』とイライラしたように返事すると席に戻った。


「……もう行ったぞ」

「うん」

「……だから、そんなずっと抱きつかなくても…」


席に戻ったとはいえ、向こうの席からもこっちが見えるだろうし…

すぐに離すのは怪しまれそう。


「……っ、あー…
……せ、先輩…」


ぎゅっと抱きついて離さない私を見て

燿が困ったように先輩に話しかけてる。



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