甘さはひかえめで。


だいたい、茜くんと出かける時は本当に欲しいものがある時だし…

目的もなく出かけることはあんまりなかったしなぁ。


「………茜クンと二人で出かけたりしねーんだ?」

「うん」

「…………へ〜」


小さく呟く燿の表情は、なんだか嬉しそう。

さっきは不服そうだったのに。

コロコロ変わって忙しい人…。


「まぁとりあえずどっか行こうぜ」


そう言って強引に私の手を引っ張る燿。

あ、もうこれ拒否権ないやつだ。


「言い出しっぺは燿だから
燿がエスコートしてよね」


諦めて付き合うけど、

私にプランを求められても困るから、先に釘を刺しておく。


「もちろん」


燿のその声は、ちょっとだけ不安そうに震えてた気がして。


「ぷっ!」

「はっ?何笑ってんだよっ」

「ううん、なんでもない」

「(なんかバカにされてる気がするけど
笑顔見せられると何も言えねーじゃんかよ)」


燿がスマートにエスコートしてくれるのを想像できなくて私もちょっと不安になったけど、

なんとなく、燿とだったらなんでも楽しそうだなって思った。


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