甘さはひかえめで。


燿に連れられて、この辺りでは一番大きなショッピングモールにやって来た。


「人多いね〜」

「はぐれんなよ」

「はぐれても連絡すれば良くない?」

「ちげーじゃん!
だから……その…」


ごにょごにょと小さな声で何か言いながら俯く燿。

ん?と首を傾げると、意を決したように燿は顔をあげた。


「い、一緒にいなきゃ、意味な…」

「あれ?燿?」


燿が何か言おうとした時

すぐ近くで燿を呼ぶ声がした。


「燿だよな?オレのことおぼえてる?」

「え、あー…河口…」

「そーそー!久しぶり!
つっても、中学の卒業式が最後だから、半年も経ってないかー!」

「あー…だな」


私に背を向け、声をかけてきた男の子と燿が話してる。

そして、その男の子と一緒にいた友達らしき人もこっちに近付いてきた。


「河口、誰このイケメン」

「中学の時の友達」

「自慢の友達じゃん!」


河口と呼ばれた男の子とその友達が談笑してるのを


「……」


燿は何故か、あまり楽しそうには見ていなくて。


「…あの!
すいません、デート中なので!」


燿の腕をぎゅうっと強く抱きしめて

そのまま逃げるように燿を引っ張って人混みに紛れた。


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