甘さはひかえめで。


しばらく店内を満喫してからショッピングモールを出る。

お昼を食べるだけの用事だったはずなのに、もうすぐ16時になろうとしていた。


「あ、もうこんな時間」

「悪いな、無理やり付き合わせて」

「ううん。楽しかったからいい」

「……そか。
じゃあ、送る」

「えっ!
いいよ!燿、完全に寄り道でしょ?」


家反対方向だって田中くんが言(以下略)


「いいから。
俺はまだちょっとでも長く一緒にいたいの」

「………燿って、
意外と寂しがりやなんだね?」


親友と呼べる人がいなくても友達は多いし、

一人は寂しいんだね。


「……もういいよそういうことで。
そーだよ、寂しがりやなんですー」

「なにその投げやりな言い方ー」


ポコ、と燿の腕を軽く小突くと

私たちの横に1台の車が停まった。


「……?」

「あっ」


なに?と思ってる私とは反対に、燿はなにか心当たりがあるようで。


「燿」


開かれた助手席の窓から顔を覗かせた女の人が、燿の名前を呼んで手を振った。

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