甘さはひかえめで。
「それから、動けるか動けないかはさておき、
バレーで大事なのは声出しだ。
声を出さないと、よくお見合いする」
「お見合い?」
首を傾げると、八神くんが上にボールを投げ、
そのボールは私と八神くんの間にストンと落ちてきた。
「人と人の間くらいに来たボールを
互いに相手に譲ろうとして、結果どっちも拾わないやつな」
「たしかに…。声かけないとぶつかっちゃったりとかもしそうだね」
「そ。
それしないために、名前呼んで『おまえが行け!』って指示すんだよ。
たとえば今みたいに俺と乃々の間にボールが来た時、
『乃々!』って呼ばれたら乃々が拾いに行く。
そしたら俺は乃々の邪魔をしないように次の動きを考える」
「じゃあ、もし『燿!』って呼ばれたら、
私は邪魔しないように、ボールから離れたほうがいいってこと?」
そういうことだよね?と首を傾げたら、
八神くんが私の方を見ながら、びっくりした顔をしていた。
「……八神くん?
あれ、私変なこと言った?」
「………あ、いや。
アホのくせに意外に理解早いなと思って」
「こんな丁寧に説明受けてるんだからわかるよ」
私のことどんだけアホだと思ってるんだ!?いくらなんでも失礼すぎる!