甘さはひかえめで。


そんな失礼なこと言うなら練習やらないぞ!と言おうとしたけど、

八神くんがいつもみたいに意地悪そうな顔をしてなくて、調子が狂う。


「ん、まぁそういうことだから
……乃々も試合中、『燿』って呼んでいいんだぞ」


それは八神くんらしからぬ行動で、

照れくさそうに鼻の頭を掻きながらそう呟いた。


……いつもの俺様じゃない。意外だ。


「でも、指示は八神くんがするんじゃないの?」

「俺一人で何でもできねぇから。
チーム全員声は出してくれると助かる」

「わかった。
じゃあ、燿って呼ぶね」


文字数は同じだけど、濁音がないから言いやすい…かも?


「……おう。
あー…せっかくだから、チームの親密度上げのためにも普段から『燿』って呼べば?」


八神くんが落ち着かない様子でバレーボールを両手でくるくるまわす。

ボールを見ていて、私とは目を合わせない。


「…まぁ、八神くんがいいなら…」


私は許可した覚えないけど、初めから八神くんは私のこと勝手に『乃々』って呼んでるし

私が『燿』って名前で呼んでおあいこかな。


「おー。俺だいたい誰からも名前で呼ばれるから
名字で呼ばれる方が気持ち悪ぃし。
だから全然気にせず呼べ」


目を合わせないまま、やが…燿はそう言った。


最終的に命令形になってるし。

でも、試合のときのために普段から呼んで慣れとくのは良いことだよね。


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