甘さはひかえめで。


軽くボールの打ち合いをしていたら、

燿がボールをキャッチして、またアドバイスをくれる。


「声出しだけど、
拾う時だけじゃなくて自分が次誰に向けて打つか指示する時にも言うといい。
だからこう、トス上げるときに…」


軽い手付きでボールをポンと打ち上げた時に、燿は『乃々』って私の名前を呼んだ。

ふわっと上げられたボールは、私の構えてた位置に落ちてきて、トンッと燿に向かって打ち返す。

燿は『上出来』言ってくれて、私が返したボールをキャッチした。


「まぁ初めはコントロールできねーだろうから、
打ってから近いやつの名前呼べばいい」

「はいっ」

「お、声出てんじゃん」


『その調子で頑張ろうぜ』と、燿はポン、と私の頭を撫でる。

燿の行動に『え』ってびっくりして、

髪ボサボサじゃなかったかなとか、だんだん気になって自分で頭を触った。


……私、今、燿に頭撫でられたんだ…。



「……なんか減る気がする」

「あぁ?」


普段なら叩いたりしそうだし、撫でるなんて意外だっただけ。

ちょっと、ドキドキしちゃった…なんて


……ただのギャップのせい、だと思う。


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