甘さはひかえめで。
カッコいいところ



茜くんに連れられて保健室に着く。

保健室のドアを開けたら、保健委員らしき女の先輩が一人、なにやら作業をしていた。


「…あれ、怪我?」


先輩は鼻を押さえた私を見て聞いてくる。


「すいません、ボールぶつかって鼻血が…」

「大変!
ティッシュ…」


先輩がすぐにティッシュの箱を持ってきて渡してくれる。


その先輩はどこも怪我してないはずなのに、血まみれの私の手や茜くんのジャージを見て『痛い…』って呟いてる。

きっと、優しい先輩だ。


「ジャージが血まみれ…。
これ、キミの?
代わりのジャージ貸し出せるけど、いる?」

「いえ。今日は着ないので大丈夫です」

「そっか。
ボールぶつかったって言ってたけど、
鼻の骨折れたりはしてない?」

「それは大丈夫です」


当たった瞬間は痛かったけど、今はもうそんなに痛くない。

折れてたらもっと痛いだろうし、鼻血程度で済んでよかったよ。


それにしても…保健の先生はいないのかな?


「…あの、先輩だけですか?
先生は…」

「先生は外の救護テントの方にいるよ。
わたしは保健委員だけど、
絆創膏取りにきただけだからすぐ戻るんだ」


ちゃんと見てもらいたかったら先生呼んでこようか?と先輩が言ってくれたけど、

鼻血を止めることくらい一人で出来るから、『大丈夫です』と断った。


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