甘さはひかえめで。



体育館での入学式の長い話も終わり、そろそろ式の終わりが近づいてくる。


出席番号のせいで、この先ずっと八神くんと関わっていく機会があると思うと気疲れハンパない…。

式の最中は意外にも何もしてこなかったけど、やっぱり席は隣だし…

こんな意地悪言われるくらいなら、ちょっと冷たいけど大人しい茜くんの方がいいよ…。


そう思ってチラッとA組の方を見たら、

背が高くて姿勢がいい茜くんは目立ってて、すぐに見つけられた。


……はぁ…茜くんと同じクラスがよかったな。





式が終わって、A組から順に退場していく。

席を立つと、やっぱり茜くんの背、大きいなって感じる。

ボーッと茜くんを目で追ってると

急に二の腕を掴まれて、ぐいっと立たされた。


「わぁ!びっくりした…」

「びっくりした、じゃねーよ。
『B組起立』って言っただろ」


俺のおかげで恥かかなくてよかったな、と隣の八神くんが意地悪に笑った。


「……ありがと」


不本意だが、引っ張ってくれて助かった。本当に恥をかくとこだった…。


「乃々って見た目通り鈍くさいのな」

「……」


一言余計なんだよね!

お礼言ったの今すぐ撤回したくなる!


『どういたしまして』でいいじゃん!意地悪な言葉しか言えない病気なの!?


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