甘さはひかえめで。
燿は私を引っ張って、屋上に続く階段までやってきた。
屋上は鍵もかかってるし、立ち入り禁止のため、階段にもあまり近付く人はいない。
隠れて密会するにはいい場所。
「乃々」
「……」
「泣きたいなら泣け。
大丈夫、俺は笑ったりしねぇから」
ストン、と階段に腰をおろすと
燿が頭を撫でてくれた。
「……いつもは、こんなの平気なの」
「……」
「言われ慣れてる。茜くんと一緒にいても、よく言われたから」
たぶん燿の言う通り、
私と茜くんって、距離が近いんだと思う。
だから文句を言われる。
だけど、茜くんから距離をとろうと思ったことは、一度もない。
「でも、こういうとき、
私の我慢の捌け口になってくれたのは、茜くんだった…」
私が陰で悪口を言われたら
茜くんが傍にいてくれて、愚痴を聞いてくれて、
誰がとは言ってないのに、次の日には悪口を言ってた子は黙ってた。たぶん、茜くんが何か言ったんだと思うけど。