私、修道女になりたいのですが。。。 ー 悪役令嬢のささやかな野望?
 俺を見てひどく緊張するし、少し触れただけで顔を赤くする。
そこである考えが頭に浮かぶ。
彼女は折り紙を知っていたし、ひょっとして祖母と同じなのだろうか。
「お前も今のマリアちゃんには満更でもなさそうじゃないか。以前のマリアちゃんにだったら、そんな優しく膝を貸さずに起こしていたと思うけど」
「煩い」
「図星過ぎて反論もできない?」
 ルーカスが俺を見据えてニヤリとする。
 こういうネタは本当にしつこいな。
 自分でも今のマリアをどう扱っていいかわからなくて、話題を変える。
「そんなことより、マリアの不可解な行動が気になる。孤児院に慰問に訪れたのにも驚いたが、一昨日学校で婚約破棄してほしいと頼まれた」
「はあ? 婚約破棄〜!」
 素っ頓狂な声をあげるルーカスを小声で注意した。
「しっ! 声が大きい。彼女が起きる」
「あっ、ごめん。それで断ったんだろうな」
 声を潜める彼の言葉に小さく頷いた。
「もちろん。俺の一存で決めていい話ではない」
 相手が誰であっても同じ回答をしただろう。
「そういうとこクールだよねえ。そんなお前に愛想が尽きたのかもよ。だが……以前のマリアちゃんはお前にベッタリ付きまとっていたよな。やっぱ落馬で頭打って性格変わったか」
 もう別人としか思えない。
 顔は変わっていないはずなのに、今は顔さえも違って見えるのだ。
「その落馬事故だが、不審な点がある。公爵家の使用人の話では、マリアが落馬した日、爆竹の音がしたらしい」
 誰かがマリアを殺めようとしているのではないか。
「なんだか陰謀の匂いがするな。婚約破棄の申し出といい、マリアちゃんなにかに追い詰められてるのかも。このまま公爵邸に彼女を送っていくのは危険じゃないか?」
 ルーカスの懸念はもっともだと思う。
「そうだな。落馬がただの事故でないなら、また彼女の身になにか起こるかもしれない。ルーカス、彼女の周囲を調べてくれないか?」
 一応婚約者としては見過ごせない。
「仰せのままに」
 ルーカスは真剣な目で俺を見つめ返事をする。
 そのままマリアを城に連れ帰ると、侍従に部屋を用意させ、彼女をベッドに寝かせた。
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