私、修道女になりたいのですが。。。 ー 悪役令嬢のささやかな野望?
 すると、彼女がうっすら目を開ける。
「お母さんの……肉じゃが食べたい」
 その目は俺を見ていなかった。
 ニクジャガ?
 意味不明の言葉が飛び出してきて小首を捻ったら、突然彼女が俺に抱きついてきた。
「私……死にたくない。運命って……変えられないの……?」
 なんとも悲痛な声。
 寝言だし、どう声をかけていいかわからなくて黙っていたら、マリアが急にしくしく泣き出した。
「どうして……こうなっちゃったの? 真面目に生きてきたのに……。神様に嫌われ……ちゃったの……かな?」
 しゃくり上げる彼女の背中を撫でて、優しく声をかける。
「大丈夫だ。マリアは死なない。俺が約束する」
 俺の声を聞いて安心したのか、スーッと寝息が聞こえてきた。
 今動いたら起こしてしまうかもしれない。
 しばらくこのままでいよう。
 マリアと一緒にベッドに入り、しばらくその寝顔を見守っていたが、彼女の体温で身体が温まったせいか、俺もうとうとしだして、そのまま穏やかな眠りに誘われた。

「……な、なんで? どうしてアレックス様が同じベッドに? ……それに、ここどこ?」
 マリアのかなり動揺した声が聞こえて、パチッと目を開けると、彼女と目が合った。
 すると、マリアの顔が瞬時に強張る。本人には悪いがクスッと笑ってしまった。
「人間驚くと、本当に氷のように固まるんだな。初めて知った」
「ア……ア……アレ……」
 恐らく彼女は俺の名前を言おうとしているのだが、顎がガクガクして声が出ない。
「まるで妖魔にでも出くわしたみたいな反応じゃないか。そんなに俺が怖いか?」
 フッと笑って問うと、彼女は首をブンブンと横に振る。
「ここは城だ。誤解のないように言っておくが、お前に手を出してはいない」
 俺の言葉を聞いて、彼女はあからさまにホッとした顔をする。
 そんな顔をされると、少し面白くない。
「お前が抱きついて離れなかったから一緒に寝た」
 淡々と事実を伝えると、彼女は青ざめた。
「わ、私……とんだご迷惑を。すみません。どうお詫びすれば」
 俺を見ておろおろするマリアがかわいく思えて……気づいたら、彼女の頬に触れていた。
「だったら、その唇をもらう」
 マリアがなにか言う前に彼女の唇を奪う。
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