私、修道女になりたいのですが。。。 ー 悪役令嬢のささやかな野望?
シャーロットは優しく接してくれるけど、彼女に親切にされるほど鳥肌が立つのだ。
 これってマリアの感覚なんだと思う。
 厩舎には五頭の馬がいて、そのうちの一頭の白馬と目が合った。
「その馬がマリア様の馬ですよ。名前はブランシュ」
 グレースがそう教えてくれて、ブランシュに近づく。
「かわいい」と言いながら、ブランシュを撫でたら、頭を擦り寄せてきた。
「マリア様、人参をあげてみますか?」
 私に声をかけてきたのは、十五歳くらいの茶髪の少年で、名前はキース。
「わあ、あげたいです」
 動物園にやってきた子供のようにウキウキしながら返事をする私に、キースが人参をくれた。
 その人参を恐る恐るブランシュの口元に近づけると、ボリボリ食べてくれて……。
 嬉しくなって、「ねえ、乗ってみてもいい?」とふたりに聞いたら、とても渋い顔をされた。
「落馬したばかりなんですよ」
「そうそう。マリア様、まだ体力戻ってないから」
「でも、ブランシュが乗ってって言ってる気がするの。お願い!」
 ブランシュだってマリアを落としてショックだったんじゃないだろうか。
 私自身は馬に乗った経験はないが、マリアは乗馬が得意だったらしい。だから、きっと乗れるはず。
「ですが、落馬した原因がわからないから、今はやめておいた方が……」
 そう。乗馬が得意だった私がどうして落馬したのかは、誰も知らない。
 私を案じるキースの手を両手で掴んで頼んだ。
「キース、お願い」
「うっ、ちょっとだけですよ。あの、マリア様……そろそろ手を離してください」
 キースが頬を赤くしながら言うのを見て、慌ててパッと手を離した。
「あっ、ごめんなさいね」
「なんかマリア様、変わりましたね。親しみやすくなって貴族の令嬢っていうより、町娘って感じ」
 彼の指摘にギクッとする。
「きっと記憶を少しなくしているせいよ」
 笑ってごまかすと、キースの手を借りて、馬に乗る。
 なんだかすごく高い。馬の上ってこんな高いの?
不安を感じて降りようとしたら、ブランシュが突然走り出した。
「ぎゃあああ〜!」
 公爵令嬢らしからぬ叫び声をあげるが、ブランシュは構わず加速する。
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