元伯爵令嬢は乙女ゲームに参戦しました
庶民生まれのお嬢様
「あ……もうこんな時間なのね」
早く支度をしなくてはと、鏡の前に立ちもう一度新しい制服がおかしくないか確認をしました。
ベージュに茶色のラインが入ったジャケット、胸に切り替えの入ったワンピース型の制服は、とても可愛らしいく気に入っています。
出来ればスカート丈はくるぶしまで欲しかったのだけれど、『それじゃあスケバンだわ』とお母様に言われました。スケバンって何のことだかわからなかったけれども、くるぶし丈の制服はありえないということは理解できましたので厚手のタイツをはくことにしました。どうしても足を出すことは未だに抵抗があるのですが、いたしかたありません。
サイドの髪を三つ編みして後ろでまとめて、お気に入りのバレッタをつければ完成です。
「お姉ちゃん、おはー」
「おはよう、きららちゃん。今朝は早いのね」
「……っす」
「おはよう、はると君。今日はゆっくりね。朝練習はお休みかしら?」
「だってー、今日はお姉ちゃんの入学式じゃん!いっしょに写真撮ろうと思って頑張って起きた」
はる兄も待ってたんだからーと、からかうように笑う妹が可愛いすぎます。最近気難しくなってきたはると君は「うるさい」と、きららちゃんの頭を叩こうとするので、あわてて間に入りました。
「ありがとう。じゃあ一緒に写真を撮ってくれるかしら?」
両手に花とばかりに腕を組むと、きららちゃんは私の胸にすりすりと頭を寄せて、はると君はなんだかもぞもぞと落ち着きがありません。
ああ、本当にうちの弟と妹が可愛いすぎます。
二人のスマホで写真を撮っていると、お父様がワイシャツにネクタイを巻き付けながらダイニングに顔を出しました。
「おはようございます。お父様」
「おはよう、うらら。今日は入学式だねー、おめでとう」
「ありがとうございます」
笑顔を返して紅茶を淹れましょう。
「せっかくの晴れの日に新素材の勉強会で日帰り出張だなんてやだなあ。……やっぱり休んで入学式に出ようかな」
「あら、一人で大丈夫ですわよ。もう高校生なのですから」
「いや、でも。ねえ……」
「私のことよりも、明日のきららちゃんの中学入学式の方へ出席してください」
「……はい」
きっぱりとお断りをします。お母様もパートの都合で明日しか休めないのだから、きららちゃんの方を優先してほしいですわ。なんといってもまだ12歳なのです。
「可愛い妹の行事はきちんと記録をしてきてくださいな、お父様」
そうお願いをしながら、紅茶で喉を潤し、さて、と腰を上げます。
「では、いってきますわ」
「いってらっしゃい。本当に気を付けてね、えっと、いろいろと」
「いってらっしゃーい!お姉ちゃん、ガンバ!」
「気いつけて」
玄関を開ければ、すっきりと晴れ渡る空が映えています。新しい事が始まるにはもってこいの天気だわ。さあ、行きましょう。
前世とは全く違う、15歳の春の一歩を踏み出しました。
早く支度をしなくてはと、鏡の前に立ちもう一度新しい制服がおかしくないか確認をしました。
ベージュに茶色のラインが入ったジャケット、胸に切り替えの入ったワンピース型の制服は、とても可愛らしいく気に入っています。
出来ればスカート丈はくるぶしまで欲しかったのだけれど、『それじゃあスケバンだわ』とお母様に言われました。スケバンって何のことだかわからなかったけれども、くるぶし丈の制服はありえないということは理解できましたので厚手のタイツをはくことにしました。どうしても足を出すことは未だに抵抗があるのですが、いたしかたありません。
サイドの髪を三つ編みして後ろでまとめて、お気に入りのバレッタをつければ完成です。
「お姉ちゃん、おはー」
「おはよう、きららちゃん。今朝は早いのね」
「……っす」
「おはよう、はると君。今日はゆっくりね。朝練習はお休みかしら?」
「だってー、今日はお姉ちゃんの入学式じゃん!いっしょに写真撮ろうと思って頑張って起きた」
はる兄も待ってたんだからーと、からかうように笑う妹が可愛いすぎます。最近気難しくなってきたはると君は「うるさい」と、きららちゃんの頭を叩こうとするので、あわてて間に入りました。
「ありがとう。じゃあ一緒に写真を撮ってくれるかしら?」
両手に花とばかりに腕を組むと、きららちゃんは私の胸にすりすりと頭を寄せて、はると君はなんだかもぞもぞと落ち着きがありません。
ああ、本当にうちの弟と妹が可愛いすぎます。
二人のスマホで写真を撮っていると、お父様がワイシャツにネクタイを巻き付けながらダイニングに顔を出しました。
「おはようございます。お父様」
「おはよう、うらら。今日は入学式だねー、おめでとう」
「ありがとうございます」
笑顔を返して紅茶を淹れましょう。
「せっかくの晴れの日に新素材の勉強会で日帰り出張だなんてやだなあ。……やっぱり休んで入学式に出ようかな」
「あら、一人で大丈夫ですわよ。もう高校生なのですから」
「いや、でも。ねえ……」
「私のことよりも、明日のきららちゃんの中学入学式の方へ出席してください」
「……はい」
きっぱりとお断りをします。お母様もパートの都合で明日しか休めないのだから、きららちゃんの方を優先してほしいですわ。なんといってもまだ12歳なのです。
「可愛い妹の行事はきちんと記録をしてきてくださいな、お父様」
そうお願いをしながら、紅茶で喉を潤し、さて、と腰を上げます。
「では、いってきますわ」
「いってらっしゃい。本当に気を付けてね、えっと、いろいろと」
「いってらっしゃーい!お姉ちゃん、ガンバ!」
「気いつけて」
玄関を開ければ、すっきりと晴れ渡る空が映えています。新しい事が始まるにはもってこいの天気だわ。さあ、行きましょう。
前世とは全く違う、15歳の春の一歩を踏み出しました。