来世なんていらない
「イジメから救ってくれたのは真翔だったの。中一の夏休み前だった。掃除が終わってゴミを焼却炉前に運んでる時だった。後ろから蹴られて、転んで見上げたらやっぱりあいつらが居て」
「うん…」
「別の子にも顔を叩かれて、うずくまってる私の上にゴミをかけられた」
「酷い…」
「その時にね、突然腕を掴まれて、誰かが私を無理矢理立ち上がらせたの。いじめっ子の誰かだって咄嗟に思ったけど、顔を見たら喋ったことも無い男子だった。隣のクラスの小高真翔だって気付いた時には、真翔に腕を引っ張られたまま走ってた。顔は知ってたのよ。小学校は違ったんだけど、中学で一緒になって、顔がすごくタイプだったの」
武田さんはニッて笑った。
その表情は真翔に似てるって思った。
「その日から私の世界は変わった。真翔が毎日様子を見に来てくれて、最初は影でイジメられたけど、真翔があまりにもしつこく来るもんだから終業式の頃にはイジメも無くなってきて、夏休みが明けてからは誰も私への興味すら無くなってた。中二になってちーちゃんと友達になって…」
「ちーちゃん?」
「千葉」
「ああ、可愛いね、ちーちゃんかぁ」
「もう誰にもナメられたくなくて、“いじめられっ子”から、真翔の中で“可愛い子”になりたくてメイクを覚えて、背伸びして美容室にも通った。ダイエットも勉強も苦じゃ無かった。絶対に真翔と一緒の高校に行きたかったし、私も…未来を生きる為の努力をしたの」
「そう、だったんだね…」
「なのにあんたの未来を潰そうとした」
「それは…」
「謝っても九条さんの中の憎しみは消せない。私があいつらへの感情を消せないように。無かったことには出来ない。だから私を許さなくていい。私も、真翔のことは一生根に持ってるし」
武田さんが笑った。
根に持たれるのはきっと本気だ。
武田さんにとって真翔は生きていく理由なんだから。
私も同じ。
「根に持たれるのは怖いなぁ」
笑った私に、武田さんは「当然でしょ」って言った。
「うん…」
「別の子にも顔を叩かれて、うずくまってる私の上にゴミをかけられた」
「酷い…」
「その時にね、突然腕を掴まれて、誰かが私を無理矢理立ち上がらせたの。いじめっ子の誰かだって咄嗟に思ったけど、顔を見たら喋ったことも無い男子だった。隣のクラスの小高真翔だって気付いた時には、真翔に腕を引っ張られたまま走ってた。顔は知ってたのよ。小学校は違ったんだけど、中学で一緒になって、顔がすごくタイプだったの」
武田さんはニッて笑った。
その表情は真翔に似てるって思った。
「その日から私の世界は変わった。真翔が毎日様子を見に来てくれて、最初は影でイジメられたけど、真翔があまりにもしつこく来るもんだから終業式の頃にはイジメも無くなってきて、夏休みが明けてからは誰も私への興味すら無くなってた。中二になってちーちゃんと友達になって…」
「ちーちゃん?」
「千葉」
「ああ、可愛いね、ちーちゃんかぁ」
「もう誰にもナメられたくなくて、“いじめられっ子”から、真翔の中で“可愛い子”になりたくてメイクを覚えて、背伸びして美容室にも通った。ダイエットも勉強も苦じゃ無かった。絶対に真翔と一緒の高校に行きたかったし、私も…未来を生きる為の努力をしたの」
「そう、だったんだね…」
「なのにあんたの未来を潰そうとした」
「それは…」
「謝っても九条さんの中の憎しみは消せない。私があいつらへの感情を消せないように。無かったことには出来ない。だから私を許さなくていい。私も、真翔のことは一生根に持ってるし」
武田さんが笑った。
根に持たれるのはきっと本気だ。
武田さんにとって真翔は生きていく理由なんだから。
私も同じ。
「根に持たれるのは怖いなぁ」
笑った私に、武田さんは「当然でしょ」って言った。