来世なんていらない
午後一時。
応援合戦の時間がやってきた。

演目の順番は、参加するクラスの担任達がくじ引きをして決められる。

私達二年三組は一番になった。

ドキドキ緊張して待つ時間もあまり無い。

演目チームを中心に、その十一人を囲むようにしてクラス全員で円陣を組む。

「みんな、いっぱい楽しもうね。演目チームは笑顔を忘れずに。みんなは出せる限りの掛け声を!」

「はい!!!」

演目の指導を最後までしっかりやり遂げてくれた高嶋さんがみんなの気持ちをまた一つにまとめてくれた。

「九条さん」

「はい」

高嶋さんの手から龍が追う“玉”を渡される。
その棒を受け取る私の手は震えている。

私に玉を渡した高嶋さんが「左手貸して」って言った。

左手を差し出す。

私の左手を握った高嶋さんは、体操服のハーフパンツの後ろポケットから取り出した物を、私の左手首にスッと通した。

「これ…」

「リストバンド。小物チームに頼んで一緒に作って貰ってたの」

「い…いつ?」

「三十日と三十一日、来なかった人達居たでしょ。生地を買いに行って、大急ぎでね」

濃い、エンジに近い色。

「千葉さんが、絶対赤がいいって。赤すぎるとちょっと派手すぎるかなって思って、これを選んでもらったんだ。私も千葉さんもずっと準備に参加してたからさ、他の子達に頼んで」

「気に入ってくれた?」

高嶋さんとずっと演目の指揮を執ってくれていたダンス部の女子が微笑む。

「うん…うん…」

涙が次々と溢れて、貰ったばかりのリストバンドでうっかり涙を拭きそうになってしまった。

「もー、泣くのは終わってからにしてよね」

また千葉さんに叱られてしまった。

コクコク何度も頷いてたら、真翔が手の平で涙を拭ってくれた。

「お前も!終わるまで我慢しろよ!」って橋本くんが茶化して、武田さんが「ウザ」って言った。
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