来世なんていらない
「橋本くん!」

「わ!九条さん、びっくりした!」

「ねぇ、真翔と連絡ついた?」

「いや、九条さんも?あいつ体調悪いのかー?」

「真翔がよく行きそうな場所、知ってる?」

「えー、行きそうな場所?」

「高い場所で!」

橋本くんが考える素振りをしてから「高い場所?いや、分かんないな」って言った。

「真翔のお父さんのクリニックは知ってる?」

「あぁ、駅前のだろ」

「駅前?」

「九条さん、行ったことない?S.K buildingって白い看板の」

「S.K building?」

「ソウスケ コダカ。真翔の父親のイニシャルだよ。あー、そうだな、あそこなら高い場所だな。真翔んとこのクリニックは一階だけど五階建で屋上があってさ。他のクリニックとか薬局とか会社の事務所としても間貸してるらしいよ。俺が思いつくのはそこくらい…って、九条さん!?」

「ありがとう橋本くん!」

橋本くんが言い終わる前に私は走り出していた。
席から鞄を掴んで廊下に飛び出す。

後ろから橋本くんが私を呼んで、廊下に出てきた武田さんも「どこ行くのよ!」って叫んでる。

でも私は振り向かなかった。
無我夢中で駅まで走った。

足がもつれて転びそうにもなった。
息が切れて苦しかった。
それでも走り続けた。

あのビルが真翔のお父さんの物だったなんて知らなかった。

屋上まで上れば学校と同じくらい、ひょっとするとそれよりも高いかもしれない。
あの写真の見下ろしている感じも納得出来る。

なんでそんな場所に居るの。
お願い。私の憶測が外れていますように。

間に合って…お願い…
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