来世なんていらない
平日の朝なのに駅前には沢山の人が歩いてる。
大人は平日もお休みの人が沢山居る。
どこのお店もオープンしていて、人々が思い思いの場所に行き交って、街全体が息をしているみたいだ。
真翔のお父さんのビルはすぐに見つかった。
出入りしている人も多い。
地上の正面に堂々と看板を構えるのが「小高呼吸器クリニック」。
それより上も皮膚科とか歯医者とか調剤薬局があって、会社の事務所とか、美容室の看板も連なっている。
屋上を見上げた。
ここからじゃよく見えない。
フェンスが見える。
本当に、学校よりは高い。
ぐるっとビルの周りを回ってみた。
小さく、何かが動いた気がする。
気がするだけかもしれない。
もう考えてる時間がもったいない。
ビルに飛び込んで、一階にあったエレベーターの上るマークを連打した。
連打してもエレベーターの速度が上がるわけじゃない。
階段…とチラッと思ったけれど、私の体力やスピードを考えれば、絶対にエレベーターを待ったほうが早い。
やってきたエレベーターに飛び乗って、屋上の文字を連打。
ゆっくりと上っていくエレベーターが永遠に屋上に辿りつかないんじゃないかと思った。
二階、三階と点滅していくランプがもどかしい。
屋上にようやく着いて、半開きになっている鉄扉を押し開けた。
当たり前だけど、うちのアパートのドアよりずっとずっと重たい。
「真翔!!!」
飛び込んだ屋上の先、フェンスと、その手前の申し訳程度に段差になってるくらいの簡単に乗り越えることが出来る位置。
真翔が空を見上げてた。
「真翔!」
名前を叫びながら、駆け寄った。
真翔がゆっくりと振り向いた。
「なんで…」
「やっと見つけた…!何やってんのよバカ!」
「なんで分かったの」
「橋本くんに教えてもらったんだよ!みんな心配してる。真翔のことを待ってる。なのに何やってんの!?」
「父さんもバカだよな」
「何、お父さん?そんなことどうだって…」
「ここさぁ、別に何かに使ってるわけじゃないから一応対策としてフェンスがあるくらいでさ。 こんなの簡単に乗り越えられるし、飛び降りてくださいって言ってるようなもんだよ」
「どうやって入ったの。屋上なんてずっと開いてるわけじゃないでしょ」
「コレ」
真翔は手に握っていた物を私に見せた。
クマのチャーム。
家の鍵に付いていたのと同じだ。
そこに鍵がもう一本増えている。
「父さんはね、帰ってきたらいつも決まった場所に鍵を置くんだ。自分の車とか家の鍵とかのキーケースも、このビルの鍵をまとめてるやつも。父さんも屋上なんて滅多に上んないだろうから無頓着だろうなって思って、一昨日、抜いてみたんだよね。思った通り、全然気付いて無い。人のこと見下してるくせに、そういうとこはズボラなんだよ。いや、もしかしたらわざとかもな」
皮肉っぽい笑い方をする真翔。
お願い、そんな顔しないで…。
大人は平日もお休みの人が沢山居る。
どこのお店もオープンしていて、人々が思い思いの場所に行き交って、街全体が息をしているみたいだ。
真翔のお父さんのビルはすぐに見つかった。
出入りしている人も多い。
地上の正面に堂々と看板を構えるのが「小高呼吸器クリニック」。
それより上も皮膚科とか歯医者とか調剤薬局があって、会社の事務所とか、美容室の看板も連なっている。
屋上を見上げた。
ここからじゃよく見えない。
フェンスが見える。
本当に、学校よりは高い。
ぐるっとビルの周りを回ってみた。
小さく、何かが動いた気がする。
気がするだけかもしれない。
もう考えてる時間がもったいない。
ビルに飛び込んで、一階にあったエレベーターの上るマークを連打した。
連打してもエレベーターの速度が上がるわけじゃない。
階段…とチラッと思ったけれど、私の体力やスピードを考えれば、絶対にエレベーターを待ったほうが早い。
やってきたエレベーターに飛び乗って、屋上の文字を連打。
ゆっくりと上っていくエレベーターが永遠に屋上に辿りつかないんじゃないかと思った。
二階、三階と点滅していくランプがもどかしい。
屋上にようやく着いて、半開きになっている鉄扉を押し開けた。
当たり前だけど、うちのアパートのドアよりずっとずっと重たい。
「真翔!!!」
飛び込んだ屋上の先、フェンスと、その手前の申し訳程度に段差になってるくらいの簡単に乗り越えることが出来る位置。
真翔が空を見上げてた。
「真翔!」
名前を叫びながら、駆け寄った。
真翔がゆっくりと振り向いた。
「なんで…」
「やっと見つけた…!何やってんのよバカ!」
「なんで分かったの」
「橋本くんに教えてもらったんだよ!みんな心配してる。真翔のことを待ってる。なのに何やってんの!?」
「父さんもバカだよな」
「何、お父さん?そんなことどうだって…」
「ここさぁ、別に何かに使ってるわけじゃないから一応対策としてフェンスがあるくらいでさ。 こんなの簡単に乗り越えられるし、飛び降りてくださいって言ってるようなもんだよ」
「どうやって入ったの。屋上なんてずっと開いてるわけじゃないでしょ」
「コレ」
真翔は手に握っていた物を私に見せた。
クマのチャーム。
家の鍵に付いていたのと同じだ。
そこに鍵がもう一本増えている。
「父さんはね、帰ってきたらいつも決まった場所に鍵を置くんだ。自分の車とか家の鍵とかのキーケースも、このビルの鍵をまとめてるやつも。父さんも屋上なんて滅多に上んないだろうから無頓着だろうなって思って、一昨日、抜いてみたんだよね。思った通り、全然気付いて無い。人のこと見下してるくせに、そういうとこはズボラなんだよ。いや、もしかしたらわざとかもな」
皮肉っぽい笑い方をする真翔。
お願い、そんな顔しないで…。