来世なんていらない
「来世なんていらないよ!」

「まつり…」

「真翔、あなたが私を地獄から救ってくれたんだよ。私ね、今まで何度も願った。明日目覚めたらこの地獄が終わってますように。友達に囲まれて、ママに愛されてますようにって。それでも日常が続いてて、絶対に地獄から這い上がれっこないって思ってた。でも違った。真翔が私の手を引っ張ってくれたの」

みんながくれたリストバンドを外して、左腕の全てを真翔に見せた。
真翔がくれたブレスレットが揺れている。

「コンタクト、してる?」

「してない」

「じゃあ私の顔もちゃんと見えてないね。それでもいいからちゃんと見て」

ちゃんと見えてなくてもそれでもいい。
真翔に伝えたい。

「真翔は気付いてないかもだけど私ね、あの日、誕生日に真翔がお祝いしてくれた日から一回も切ってないんだよ」

この傷はきっと一生消せない。
こうやってグレーだったり白くなったり、線になってこの腕に残り続ける。

「あの日から一本も増えてないの。真翔が私を救ってくれたから」

真翔が一歩、私のほうへ近付いた。
頬には涙が伝っている。

「来世なんていらない。欲しくない!だってまた真翔と出会える保証なんてないでしょ?そんな曖昧な約束なんていらないから、だから…だからお願い…一緒に生きようって言ってよ!この世界で一緒に生きようって!真翔…!」

私の伸ばした左手を、その指先に真翔の指が触れて、膝から崩れ落ちた。
フェンスがガシャンッて鳴って、真翔が嗚咽を上げて泣いた。

その体を抱いて、一緒に泣いた。

「生きたい…っ…許されるなら…まつりともう一度…ここでやり直したい…!」

「だいじょうぶ。真翔には私がいる。解ってくれる友達も居る。真翔はだいじょうぶ。だから一緒に生きよう。ここで一緒に」
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