来世なんていらない
「私と小高くんは違うよ…。さすがに分かるでしょ…?」

「分かんないよ」

「うそ」

「俺が迷惑?」

「…」

なんでだろう。
今ここで迷惑だって言ってしまえば、小高くんはもう絶対に私に構わない。

そうすれば女子からの小さな嫌がらせも終わるはずなのに。

その言葉が出てこなかった。

小高くんがあまりにも、泣き出しそうな目をするから。

「真翔ー!何してんのー!?」

離れた所から武田さんの呼ぶ声が聞こえてくる。
心臓がキュッてしまる感覚。

「行こ」

小高くんの声に、私は首を横に振った。
私なりの精一杯の拒絶だった。

「約束したじゃん」

「行かない」

「じゃあ俺も行けないね」

「なんで…」

「だって俺、九条さんが一緒に食べるならみんなとも食べるって約束したんだよ。九条さんが来ないなら俺も行けないね」

「脅し!?」

「あはは!そうかもね」

小高くんがニッて子どもみたいな顔で笑った。
ずるいって思った。

嫌いだ。
嫌いだ、小高くんなんか…。

「行こっ」

私の手を取って小高くんが歩き出す。
小高くんの手は冷たかった。

みんなの輪が見え始めた時、私は彼の手を強く振り解いた。
教室で転んだ時みたいに。

小高くんは悲しそうな目をしたけれど、口元だけで微笑んで、何も言わなかった。
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