来世なんていらない
「もー!遅いよ、真翔…なんだ、その子連れてきたの」

「約束したじゃん。一緒に食べるって」

「別にっそんな約束破ったってこいつは…!」

怒って声を張り上げた武田さんの肩に、小高くんがそっと触れた。
武田さんはビクッて肩を震わせた。

「りいさ」

「なっ…何よ…」

「りいさは気付いてるはずだよ。九条さんの寂しさ」

「っ…」

武田さんは気まずそうに視線を地面に落として、何も言わなかった。

「どういうこと?」

周りの女子達が不思議そうに二人を見ていたけど、小高くんは「なんでもない」って笑って、早くお弁当食べようよって、みんなを公園のほうに連れていった。

「調子に乗んないで」

「え…」

突然武田さんに言われて、私はまた怖くなった。

「知った気にならないで」

「何が…」

「うるさい!」

武田さんは走って公園のほうに行ってしまった。
小高くんも居ないし、今度こそこのまま逃げられそうなのに、私もそのあとを追った。
自分でも不思議だったけど、体が自然と動いていた。

武田さん。
「知った気」になんてなれないよ。

私はあなたのこと、なんにも知らない。
小高くんだけが知っている、あなたの「何か」を。

武田さんが小高くんのことをすごくリスペクトしてるんだってことくらいしか。

「真翔は私のだから」って、武田さんは言った。
その言葉の裏に武田さんは何を隠しているんだろう。

でもそんなことを知るた為に武田さんに関わらなきゃいけないのなら、知りたくないって今は思った。
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