来世なんていらない
「ねー、どこ中?」
「え…?」
どうせ誰にも声なんてかけられないし、かける勇気も無いからジッと俯いていたら、
いきなり背後から話しかけられて、ビクッと肩が震えたことに自分でも気が付いた。
ゆっくり振り向いたら、後ろの席の男子が、何が嬉しいのかニコニコと私を見ている。
名前は確か、小高くん。
始業式で体育館に移動する時に、友達にそう呼ばれていた気がするし、この学年で彼は人気者だから、仲が良くなくても名前くらいは知っていた。
「え…えっと…?」
「どこ中だった?」
「中学…ですか?」
「あはは!なんで敬語なの。クラスメイトなのに」
陽キャ。
彼は、ソレに分類される人間だと思う。
朝、教室に入った時から、彼の周りには沢山の人が集まっていたし、
一年生の時は違うクラスだったけど、廊下や移動教室で見かけるたびにいつも誰かに囲まれていたのを憶えている。
顔もいいから女子のファンも多かったはず。
その小高くんが、なんで私なんかに話しかけているんだろう。