来世なんていらない
河原の土手に座って、ボーッと流れる川を眺めた。

八時前にはあたたかい陽射しが射してきて、
ちょっと眠たくなってくる。

昨夜、切ってしまった腕は、無意識だったけど大判の絆創膏が貼られている。

真翔が貼ってくれた、猫の絆創膏の上から雑に。

三十分くらいして、真翔がやってきた。

「ごめん!待たせちゃって」

「ううん」

黒いTシャツの上にグレーのパーカーを羽織った真翔。

急いで来たから思いっきり部屋着だけど…ってちょっと照れたみたいに言う。

私服を見たのは初めてだったから、自分がドキドキしていることに気付いた。

「私も慌てて出てきたから…」

「なんか用事あったの?…ってそんな風でも無さそうだけど」

「うん。追い出されちゃって」

「追い出された?」

「うん。ママに」

なんでかな。
いつの間にか真翔には本当のことがスラスラ言えるようになっている。

武田さんに気持ちをぶつけた時より、全然怖くない。
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