零愛ー俺が必ずこの子を守る​ー
出会ったばっかの時は

ちょっと離れるのもだめで。

すぐ引っ付いてきて。

親指掴んで。

ぐいぐい引っ張って。

そんな芹奈から……
もう……なんの力も伝わってこないのが悲しくてたまらなかった。

あの笑顔がもう二度と見られないんじゃないか、と思ったら……

不安で不安で仕方なかった。

今は呼吸に合わせて酸素マスクの内側が曇ってくれている事だけが俺の唯一の救いだった。

……頑張って生きようとしてくれてるんだ。

ーーガラー……

その時、病室のドアが開いて嵐が入ってきた。

「桃季さん、これ……さっき警察の方が持って来てくれたんですけど、芹奈ちゃんの…ですかね」

控えめにそう言った嵐は何かを持って俺の元に歩み寄った。

差し出されたのは白い布だった。

「現場に…落ちてたらしいです」

おそるおそる白い布を広げると、

桃のイヤリングがちょこん、と入っていた。

「あ……」

そうか…。

ーー((…もも……き。これ…みて…………。買った…。………イヤリング…。かわ…、…、いい、……………?))

あの時これの事言ってたのか……。

俺はまだ眠りについたままの芹奈の髪をかき分けて、それを耳たぶに付けた。
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