零愛ー俺が必ずこの子を守る​ー

「芹奈ー、ちょっと起きろー、浴衣脱ぐぞー」

軽く肩を叩いて呼び掛けてみると
目を閉じたまま、んー、と唸った。

「……脱がして……眠い…か……ら…」

それだけ言うと
再びスースー……と、また寝息が聞こえ始めた。

「しょうがねぇな……」

ベッドが軋む音を響かせながら
無防備に眠りにつく芹奈の腰に手を伸ばして
帯を緩めた。

「…っ」

窓から差し込む月明かりにほんのり照らされた
芹奈の寝顔から目が離せなくなったと同時に
俺の心臓がいつもよりも大きく音を立てた。

そっと目を逸らしてもその衝動は
消えそうになくて。




脱がし切る事が……

今日の俺には出来ない気がして
中途半端に帯だけ緩めて部屋を後にした。
< 50 / 242 >

この作品をシェア

pagetop