零愛ー俺が必ずこの子を守る​ー
***

ベッドに連れていくと安心したのか直ぐにトロン、と眠りに落ちてしまった。

多分一時的な過呼吸だと思う。

俺は芹奈が眠るベッド脇の床に座りこんだ。

すぐ隣には口を開けば今にも皮肉を言ってきそうな芹奈がいつも通りに眠っているだけだ。

そんな芹奈を見ていると
とてつもない安心感に襲われていく。

数時間前まで獄狂乱が攻めてきて倉庫がめちゃくちゃな有様だった事などもう微塵も頭にはなく、今は目の前の芹奈で頭がいっぱいだった。

その時。ふと、気付いた。

自分の手が震えている事に。

大丈夫だろう、と高を括って
帰ってきたらあれだ。

まだ心臓がバクバクと音を立てていた。

ーー((……なんか上手く力入らないよぉー…っ…うぅっ…、えぇーん………))

あの時の……。
芹奈の手が俺からすり抜ける感覚が
どうにも忘れられなくて、怖くて。

1度残ったその感覚はなかなか消せず、
激しくなる手の震えを必死に抑えようとする。

でも到底収まる気配なんてなくて。

「……っ」

俺は控えめに布団の隙間から出された
芹奈の手首にそっと触れた。

ーードクン…ドクン…

か細い手首から伝わってくる
芹奈の脈拍を1人静かに感じていた。
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