零愛ー俺が必ずこの子を守る​ー
そっと芹奈の頬に当て涙の跡を拭う。

起こさないように慎重にやったつもりだが
長いまつ毛がピクっと微かに動いてしまった。

やべ、起こしたかな…

「……っ、」

ゆっくりと目を開けた芹奈は
まだボーッとしているのか半開きの目で
真っ直ぐと天井を眺めていた。

「芹奈?」

声を掛けるとすぐに芹奈の瞳に俺が映った。

「……」

なんと声を掛けてやればいいか分からず「大丈夫か?」と尋ねると、芹奈はコクリ、と頷いた。

月明かりだけが頼りの薄暗い部屋の中
芹奈のか弱そうな声が響く。

「……だいじょ…ぶ…」

「そうか」

それだけ会話をすると芹奈はすぐに頭まですっぽり布団を被って向こうを向いてしまった。

「……見ないで。別に。……泣いてないし」

……明らかに泣いていた。

だけど布団の中でボソッと放たれたその強がりな言葉に俺は胸を撫で下ろしていた。

「あはは、はいはい。分かってるよ」

……良かった。強がる元気はあるようだ。

でも布団が小刻みに揺れていたので
布団越しに背中をさすった。

強がりモードに入ってしまっているなら
今の芹奈的はこういう事すらされたくないかもしれないがこれは俺が頭で考えるよりも先にそうしてしまっていた。
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