零愛ー俺が必ずこの子を守る​ー
憂鬱な気分はスマホ1台でそうそう抜けてくれなかった。

「良かったな。連絡先は俺と嵐のが入ってるから、なんかあったらすぐかけること、いいな?」

言い聞かせるようにそう言った桃季は
私の通う学校の制服を着ていた。

あれ?なんで?

聖鳳凰男子校、って……
もっとビシッとした制服じゃ?

あ、そういえば。

ーー((じゃあ、桃季も明日からそこ通うの?ここから?))

ーー((さぁ、どうだろうな、芹奈が宿題全部終わったら教えるわ))

結局、宿題をほぼ全部終わらせたのは桃季であって、私じゃない。

未だ昨日の問いにきちんと答えてもらっていなかった。

「ねぇ桃季、その制服…」

「芹奈!もう時間だぞ!
HR、8時からだろ!?」

「うわ!ほんとだ!」

聞こうとした事は遮られたまま、
大急ぎで桃季と家を出ると、桃季は言った。

「俺、今日から芹奈の高校転校するからな?」

「転校…?」

突然なんて事ないみたいに放たれた
衝撃事実に固まってしまう。

「え、だって、聖鳳凰男子校…って、
頑張って受験して入ったんじゃないの?」
< 70 / 242 >

この作品をシェア

pagetop