零愛ー俺が必ずこの子を守る​ー
自分の涙腺がみるみるうちに力を無くしていく。

と、その時だった。

あちこちから「だれ?」「かっこいい」などと小さな声が聞こえてきた。

その声に顔を上げると同時に私の頭はぐしゃぐしゃされた。

「…っ、ももき……」

私の席の前で屈んだ男子生徒は桃季だった。

頭に乗せられた大きな手に妙に緊張が解けていく。

困ったように眉を下げて私を見ていた。

「あっ、東島くん!いたいた!」

そこで職員室に行く、と先程出ていった先生が小走りで教室へ入ってきた。

桃季の姿を見てホッとした表情を浮かべた先生は声を張り上げる。

「みんなー!紹介するわね、
こちら転校生の東島桃季くんです」

「東島です、よろしく」

立ち上がって一礼した桃季はぶっきらぼうにそれだけ言った。

同じクラスだったんだ…。

「えっ!?転校生!?」
「マジかっこいいじゃん!」
「やっばー!モデル並みー!」

桃季が転校生だと分かった途端
クラス中が騒ぎ出した。

特に女子がキラキラした眼差しで桃季を見ていた。

「じゃあ東島くんの席は…」

多分先生は真ん中の1番後ろの席を指さそうとしたのだろうが同時に桃季が遮るように口を開いた。
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