零愛ー俺が必ずこの子を守る​ー
困ったように表情を崩しながら桃季が
私の頭にポンっと手を置いた。

そのまま抱きしめられるように引き寄せられて。気付けば桃季の胸の中で声を押し殺して泣いていた。

しばらくすると宥めるように肩をさすっていた手を止めて
桃季がポツリと言った。

「……海里さんさ」

涙を拭いながら顔を上げると
懐かしむように含み笑いを浮かべた桃季が居た。そして少しの沈黙の後、覚悟を決めたように、教えてくれた。

「学校から帰ってくると芹奈いつも元気ないから仲間はずれにされてたらどうしよう、って、よく倉庫で悩んでたんだ」

「…」

なんだ…。気づいてたんだ。

ちゃんと普通にしてたつもりなのに。

いや。気づいてたなら普通にしてたのはお兄ちゃんも、なのか…。

何も聞かないでいてくれたのかも。

そんな事を知るとまた涙がじんわり浮かんできてしまった。

「あっ、わりぃ…、そういうつもりじゃ…」

私の涙が悪化し、焦ったような声を発した桃季がまた肩をさすってくる。

けどその時だった。

ふと横を見ると
控えめに肩を竦めた霧矢くんが真横に居た。

わ……いつから居たんだろう。

「ご…ごめん、霧矢くん…っ」
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