零愛ー俺が必ずこの子を守る​ー
ボソッと呟くように言い放った言葉をどうにも
止められなくて、叫ぶように。怒鳴るように。
言ってしまった。

「桃季は私のだもん!!」

「……」

でもすぐに我に返って周りを見るとクラスの子みんな目を丸にして私の事見てて……

今の今までクラスメイトと話してた桃季までもがこっちを見てて、全身が一気に熱くなる。

スマホに伸ばしかけていた手を引っ込めて
勢いよく走り出す足に身を任せるまま
私は全力でその場から逃げ出した。

「あっ、おい!芹奈!」

後ろから桃季の声が聞こえたけど構わず走った。


***

勢いに任せて山の奥の方に走って来てしまった私は、少し速度を緩めて歩いていた。

ポキポキと地面に落ちている枝の音と
枯葉をパキパキと踏んずける音だけが響く。

もう野村さんとは仲良くしない!

意地を張るようにそう思う手前
涙が頬を伝って、地面に落ちた。

ショックだった。

だって……っ、
……嬉しかったのに。

藤影さんと仲良くなりたい、って…、
言ってくれて嬉しかったのに…。

これから野村さんと仲良くなれるかも、
って嬉しかったのに…。

友達に……なれると思ったのに。
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