別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 多少頭が冷えてきた今、いろいろ気付くこともあった。

 和輝の行動の根底にあるのは行き先の無い未来を心配する気持ちだ。
 そうでなければ、いくら責任を感じているとはいえ、ここまで強引に家に連れてくることはなかっただろう。

「正直ここに居させてもらって助かってる。だからこそ早めに自分で引っ越し先を見つけるつもり」

『ずっと居座ればいいじゃない。それにお試しとかいって毎日甘―い生活を送ってるんでしょ。いいなぁ私も大人のイケメンに甘やかされたいわぁ~』

「そ、それは……」

 未来が言い淀んだタイミングで玄関の方で鍵が開く音がした。

「あ、帰ってきたみたい」

『じゃあ、切るわね。今度会ってゆっくり話しましょ。しばらく研修とか入ってて忙しいけど、時間できたら連絡するから』

「うん。話聞いてくれてありがと」

『まあ、がんばんなさい』

 雪成は『ウフフ』と意味深な笑い声を残して電話を切った。

「ユキちゃんったら完全に面白がってるな……」

 苦笑しつつソファーから腰を上げる。まあ、こうしてなんでも話せる親友がいるというのはありがたいことなのだが。
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