別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
『でも、珍しいですね、先輩が仕事の電話でプライベートなことを聞いてくるなんて』

「結婚式に出席した身としては気になったからな」

 そのあと、彼の惚気話に少しだけ付き合い、近々飲みにいこうとい約束し通話を終えた。

「――“名実ともに僕のもの”か」

 スマートフォンを執務テーブルに置いた和輝はふうと息をつきながら独り言ちる。

 これまで他人に対して羨望という感情を抱いたことがなかったが、今は愛する人を妻にしたと言ってはばからない後輩が率直に羨ましい。

「未来はウェディングドレスも白無垢もどちらも似合うだろうな」

 そして彼女の隣に立つのは自分だと和輝は決めていた。


 未来と出会いは彼女の生後すぐ、母に連れられて産院を訪れた時だ。 

 当時、和輝は小学2年生だったが生まれたばかりの赤ん坊は小さくて、触ったら壊れてしまいそうだと思った記憶がある。
 
 未来の母と和輝の母は同郷の親友で、お互いの家を何度も行き来していた。

 和輝はひとりっ子だったこともあり、すくすくと育つ未来のことを妹のようにかわいく思っていたし、未来も素直に慕ってくれた。
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