別れを決めたので、最後に愛をください～60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す～

　雪成は未来を連れて駅前のアーケード商店街から少し離れた路面店の洋風居酒屋に入り、奥のカウンター席のに並んで座る。
　うるさすぎず静かすぎず、話がしやすい環境だ。

　とりあえず頼んだビールを一気に煽る気分にはなれず、ちびちびと飲みながら未来は、事の顛末を説明する。

「元々和くんは日比野さんを奥さんにしたかったから、良かったんだと思う」

　雪成に説明していると、自分の気持も整理されていく気がした。

　和輝が好きだ。中学生で自覚してからしつこいくらい想ってきた。

　和輝のマンションで一緒に暮らし始めてからは、想いはさらに降り積もっていった。もう雪崩が起きそうなくらいだ。

　だからこそ速やかに彼から離れるべきだ。元々そのつもりだった。

「私、和くんと並んでもおかしくない女性になりたかったんだ。日比野さんやユキちゃんのように自分の夢を追いかけて行動したり、職場の先輩のように自信をもって大きな仕事がこなせるような」

　結局並ぶことはできなかったけれど、今までを否定するつもりはない。
　自分なりに努力してきたことは確かだから。

　そのきっかけをくれたのが５年前の加奈の辛辣な言葉だった。