別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「日比野さんにありがとうというのは何か違うけど、目を覚まさせてもらったのは確かなの。ふたりはお似合いだし、祝福しなきゃって思ってる……でもね、ユキちゃん」

 未来は手元のビアグラスを見つめた。

「和くんには何の罪悪感もなく幸せになって欲しいのに、彼に初めてをもらってもらえたのも、一緒に暮らせたことも幸せだったと思っちゃってるの。私の好きな気持ちって自分勝手だね」

 未来の話をじっと聞いていた雪成は、ふうとため息をついた。

「そんなことになってたとは、驚いたわ。辛かったわね。でもさ、未来……」

 その時、バッグに入れていた未来のスマートフォンが音もなく大きく振動した。ビクッと肩を揺らした未来は雪成の顔を見つつ恐る恐る取り出す。

「……やっぱり、和くんだ」

「出ないの?」

「何話していいかわからないよ。それに今日は友達の家に泊まるって言ってあるから、心配はかけていないと思う」

 掌の上で主張するように震えていたスマートフォンはしばらくすると動きを止めた。
 その瞬間張り詰めた空気が緩む。

「あ、あはは、し、心臓に悪いからもう一度大丈夫だからってメッセージ送ってから電源を切っちゃおうかな」
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