別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「うん、そーね。それも悪くないわね」

 雪成が突然明るい声を上げたので未来は驚く。

「ユキちゃん?」

 雪成はスウェットのポケットから黒い髪ゴムを取り出すと、髪をさっと整えてサイドで器用に束ねる。

「未来の失恋記念、撮ってあげるからスマホ貸したんさい」

 雪成は未来のスマホのロックを外させると、奪い取るようにしてカメラを自撮りモードにしてこちらに向ける。

「え」

「私も一緒に写るわよ~。ほーら笑って。この写真をネタにして一生いじってあげるから」

「もう、ユキちゃんったら」

 何がなんだかわからないうちに肩を引き寄せられる。失恋した記念写真というのはどうかと思うが、雪成なりに励ましてくれているのだろう。

(そうだよね。いつか、今日の事を笑い飛ばせるように強くならなくちゃ)

 未来が素直に従うと雪成は長い腕を伸ばし数枚写真を撮った。

 スマートフォンの画面で画像を確認し未来は感嘆の声を上げた。

「ユキちゃんのこういう感じ久々に見たなぁ。高校の時を思い出すわ」

 ノーメイクな上、グレーのパーカー姿で髪を結んでいるせいか美青年に見える。
 今では未来よりよっぽど女子力が高くなってしまったけれど、学生の時の雪成はこういう雰囲気だった。 
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