別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
『もしかして町田くんって髪の毛とかいじれる人? だったら助けてくれない?』

 元々手先が器用だった雪成は毎朝4つ年上の姉の髪の毛をセットしていた。

「お姉、弟使いが荒くて注文が多いから編み込みとかいろんなことさせられててさ、私も嫌いじゃないから動画とか見て研究していたの。それを偶然未来に見られたのよね」

「あー、そうだったね」

 未来も当時の事を思い出す。所属するチアリーディング部では秋の公演に向けて練習を始めていた。

 公演では髪の毛をアップにしたりメイクをして華やかにするのだが、当時の1,2年は揃いも揃ってそっち方面に不器用だった。

「だからそういうのが得意で、かつ部活に入っていないヒマな子いないかなって探していたところだったのよ」

「そう。最初は男だからって断ったのに“男も女も関係ない”ってしつこくてねぇ」

「まあ、藁にもすがる思いだったからね」

 雪成と未来は顔を見合わせて笑った。

 結局未来の熱意に折れた雪成はチアリーディング部のヘアメイクを担当するようになった。
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