別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
(い、いったい何から話していいのか……そもそも今日は日比野さんと会食じゃなかったのかな、でも車で来たってことはお酒飲んでないってこと?)

 聞きたいことはたくさんあるが、二人の間にある沈黙の重さにきっかけがつかめない。

先に口を開いたのは和輝だった。

「……彼、といっていいのかわからないが、君が片思いしていたのはさっきの彼じゃなかったのか」

「片思い?」

 未来は思いがけない言葉に頭を巡らせた。

(そうか私、長年の片思い相手に失恋したって和くんに話をしてたんだ)
 あの誕生日の夜、バーでそう言って和輝に抱いてほしいと迫ったのだ。片思い相手の和輝自身に。

「さっきの友達……ユキちゃんは今日はたまたまあんな雰囲気だったけど、普段は私なんかより女性らしくて綺麗なんだよ。高校の時からの親友で、今日も私を心配してくれて来てくれたの」

「そうか。俺はてっきり君の失恋相手が彼かと思っていた。だから、君からこんなメッセージが来て頭に血が上った」

 和輝はスーツの内ポケットからスマートフォンを取り出すと、メッセージアプリを開いて未来に見せる。

「え……これ、さっき撮ったやつ?」
< 199 / 230 >

この作品をシェア

pagetop