別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 未来の思考をよそに、キスが終わらないどころか、深まろうとするものだがら未来は焦って和輝の胸を思い切り押す。

「……はっ……ちょっと待った、ここ外!」

 何とか身体を離した未来は真っ赤な顔で言った。
 いくら車の中だとしてもここは屋外だ。こんなことをしていい場所ではない。

「周囲に人がいないのは確認済みだが」

 和輝は不満気な顔をしつつ、手は未来の肩から離さない。

「さすが余念ない……って、いやいやそういう問題じゃなくて――えーと、あ、ねえ和くん」

 何とか話を逸らそうと、未来は切り出した。

「今更だけど、私がお嫁に行きますって言ったら美津子さんやおじさん、がっかりしちゃうよね。それにお見合いのこともあるし」

 猪瀬家の人たちはずいぶん自分を可愛がってくれていたが、次期当主であり経営トップとなる和輝の嫁としてはしかるべき家柄や後ろ盾を持つ女性を望んでいる。

 そもそも美津子は孫にお見合いをさせるつもりだったはずだ。
 
 すると、和輝はさらに苦虫を嚙み潰したような顔になった。
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