別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
「次の休みに一緒に屋敷に行こう。その時親父と祖母さんに俺たちが結婚することを報告する。そうしたら君にもわかるはずだ、そんな心配一ミリもないことを」

 何を根拠に言っているのかわからないがやけに力強く断言されてしまった。

「ず、ずいぶん急じゃない?」

「未来は反対されたら結婚を諦めるのか?」

「ううん。認めてもらえるように努力する」

 差し迫った話に戸惑いはするが、お互いの気持が通じ合った今、結婚を、和輝を諦める選択肢はもう未来の中には無かった。
 
 足りない所だらけかもしれないが、猪瀬家の嫁として認められるように誠心誠意頑張っていくしかない。

「それを聞いて安心した。また逃げられたらたまったものじゃないからな」

 肩を引き寄せられ、ぐっと距離が近づく。

「え、ちょっと和く――」

「いいから黙って」

「んんっ……」

 仕切り直しとばかり、和輝は再び唇を重ねてきた。
 反射的に彼の胸に置いた両手に少しだけ力を入れたが、強く拒むことができない。

(く……っ、これが惚れた弱みってやつ……)
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