別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 でも拗れた分、和輝と想いが通じていること自体が何にも代えがたい幸せに思えるし、この先多少の困難があったとしても頑張れる。

「それでこそ未来ちゃん!でも、覚悟なんていらないのよ。未来ちゃんは今のままで十分」

 美津子は両手を合わせて声を上げた。

「でも、私礼儀作法とかちゃんとできなくて」

「昔と違って今は大して必要ないわよ。それに、ここで基本的なことは全部教えておいたでしょう?」

 確かに屋敷でご厄介になっている間や、独り暮らしを始めた後も定期的に着付けやマナー、料理などを美津子や井部、ほかの使用人たちに習ってはいた。

「でも、ただの楽しい習い事感覚だったんですけど……」

「未来ちゃんは素直で器用だから、なんでも身に着くのが早かったわぁ」

「まさか、お母さん、そんなに前から未来ちゃんを猪瀬の嫁にしようと画策していたとか……」

「うふふ、どうかしらね?」

 貴久と美津子の会話を聞いているうちに、本当にこの家に嫁として歓迎されている実感がわいてくる。

「私、ただでさえ皆さんに迷惑かけたのに……こんなに優しく迎え入れてもらって……ありがとう、ございます」
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