別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 和輝は濃紺のテーラードジャケットにサックスブルーのドレスシャツ、細身シルエットのブラックの細身のパンツを合わせたスマートカジュアルなジャケットスタイル。
 定番ともいえる落ち着いたコーディネイトだが、着る人が規格外にスタイルが良いので服が数段もランクアップして見える。

 普段のビシッと決まったビジネススーツ姿も素敵だが、こういう服装もものすごく似合う。
 その証拠にラウンジのスタッフや客も俳優かモデルかというオーラに目を奪われている。
 
 和輝は慣れているのか、自分が注目されていることは意に介した様子も無く真っすぐ未来に近づいてくる。

「未来、悪い。待たせたか?」

「う、ううん。私が早く着いちゃっただけだから」

 つい見とれてしまった未来は我に返り、弾かれたようにソファーから立ち上がる。
 すると未来の全身を見た和輝の表情が一瞬曇ったような気がした。

「――行こうか。店は地下フロアにある」
 
 和輝は硬い声で未来を促しラウンジから連れ出すと、やや速足で歩きだした。

(あれ、もしかしてこの格好、ダメだったかな)
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