別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 毎年、誕生日には未来が精一杯オシャレしている事を知っている和輝は、会うと『似合ってる』『気合入ってるな』などと何かしらのコメントしてくれていたのだが、今日は何も言ってくれないどころか不機嫌な気すらする。

 自分的には大人の女性になった気がしていたけれど、背伸びし過ぎて引かれたのかもしれない。

(でもそもそも和くん、私の服装になんて興味がないのかな。そうだよね。これは自己満足なんだから誉めてもらえなくて落ち込む筋合いはないんだ)
 
 とはいえ、渦巻く複雑な気持は拭えない。未来はうつむき気味に和輝の斜め後を歩いた。
 
 和輝が予約してくれたのはホテル内にある高級鉄板焼きの店だった。
 個室の中にカウンターキッチンがあり、目の前の鉄板で専属シェフが好みに合わせた焼き加減で調理してくれる贅沢スタイルだ。

 「未来、誕生日おめでとう」

 「ありがとう!」

  ビールで乾杯し、松坂牛のコースを美味しく頂く。
 ミディアムレアに焼いてもらった赤身の肉は信じられないほど柔らかくておいしい。
 コースについている前菜やサラダ、スープも普段食べているものとは次元が違う洗練された味だった。
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