別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 和輝は肉に合わせた赤ワインを注文してくれた。
 美味しい食事とお酒に気持ちが浮上していく。

 未来は基本的に好き嫌いがなく、苦手な食べ物はキュウリくらいだが、今まで和輝と食事をしていて出てきたことは一度も無い。きっといつも彼が事前に店側に伝えてくれているのだろう。そういう細かい心遣いが嬉しい。

「そういえば昨日屋敷に顔をだしてくれたそうだな」

「うん、一日早いけどって美津子さんが誕生日ランチに誘ってくれたの」

 最近足が遠のいていた猪瀬家だが、美津子に『未来ちゃんの好きなものを作って待っているから』と言われたらさすがに断れない。

(結局気になって、美津子さんに和くんのお見合いのこと聞いちゃったし)

 未来が見合いのことをそれとなく尋ねると、美津子は『今調整中なの』と笑っていた。ということは調整するような相手はいるものの、今のところ和輝が見合いをしたわけではないらしい。

「親父は昨日俺と出張だったから、参加できなくて残念だとぼやいていた」

「あはは、おじさんによろしく伝えておいて」

 食事を終えたふたりは店内のデザート専用ラウンジに移動した。

「あーおいしかった。和くんありがとうね」
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