別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 笑って和輝と会話ができていることに未来はホッとする。
 ラウンジで顔を合わせた時に不機嫌そうに見えたのは、気のせいだったのかもしれない。

 2つ目のゼリーを口に運んでいるとコーヒーカップを持った和輝が思いがけないことを言った。

「未来、よければ上のバーで飲んでいくか?」

 未来は目を瞬かせた。
 これまでは食事した後はタクシーでアパートまで送ってもらうだけで、こんな風に誘われるのは初めてだ。
 少しでも長く和輝と一緒にいたい未来は即答する。

「いいの? 行きたい!」

「わかった。ただし、あまり飲み過ぎるなよ」

 そう言うと和輝は優雅な手つきでカップを置いた。


 バーはホテルの高層エリアの45階にあった。
 初めて足を踏み入れた高級ホテルのバーはさすがというべきか、洗練された大人が集う落ち着いた雰囲気だ。

 照明が抑えられた雰囲気のある店内でふたりが通されたのは、窓辺に面した二人掛けのソファー。
 背もたれが高いカップルシートだ。

(え、どうやら私たち、カップルだと思われてる?)

 いいのだろうかと気まずさを覚えたが、和輝に気にする様子はなく、躊躇なくシートに座る。

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