別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 彼は最初からここで花束を渡すつもりで事前に手配してくれていたに違いない。なんというサプライズだろう。

 嬉しい。嬉しすぎて辛い。

(恋愛の神様、サービスが過剰です。最後にここまでされると逆に未練が残っちゃうんですけど)

「かわいい花束だね」
 自分でも処理しきれない感情を持て余しながら何とか明るい声を出す。

「未来にピッタリだろう」

 和輝はピンクのバラの花弁に手を添えいたわるように撫でる。
 その優し気な指先をぼんやりと眺めながら浮かんだのはとんでもなく自分勝手な感情だった。

(そうだよね。和くんは私のことを“かわいい妹”だと思ってるんだから)

 大人の女性を意識して服装を変えたりメイクをしても、彼にとって自分のイメージはこういうふうにふんわりとしたピンク色の花のまま。

(こんなかわいい花束を貰っておいて、少しでもこんなことを考えるなんて、私、今日は自分の性格の悪さに嫌気がさすことばかりだ)

 未来は今朝、父から再婚したい女性がいると告げられたことを思い出していた。
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