Dear.Mother【母の日短編集】
* * *
その後、咲玖の作文は額に入れて飾った。
未だにそのまま飾られている。
「ねーママ〜、幼稚園の頃の作文っていつまで飾るの?
もう恥ずかしいんだけど」
「いいじゃない。パパもお気に入りなのよ」
「えー」
娘はいくつになってもかわいいもの。
大きくなったからこそ、成長を感じて何度も見返したくなる。
「そういえば、蒼永はなんて書いたの?」
「あーー……」
蒼永くんの作文ね……。
「おじいちゃんとお父さんが喧嘩ばかりしてるって。家に帰ったらおばあちゃんに怒られたそうよ。
あなたたちがそんなだから、蒼永がこんな作文書くんだって」
「蒼永のおばあさまって怒るんだ」
「初めて怒ったところ見たって永美里も言ってたわ」
ちょっとしょぼんとしてた蒼永くんがかわいかったのよね〜。
「ご飯できたよ〜」
「パパのコロッケだー!」
「しかもカニクリームコロッケだよ」
「わーい!」
大勢で食べるご飯も美味しいけど、たまに家族三人だけの食事も良い。
夫の美味しい料理を囲むのが、私たち家族の普通だ。
誰が何と言おうと、これが我が家の幸せな日常なの。