ウェディングドレスは深紅に染まる
気味悪くギラリと光った剣が振り下ろされ、ヴァイオス・ライドの首は飛んだ。
剣を持った男を目の端に捉えたエリナ・バーラが悲鳴をあげた直後の出来事である。
生温かい赤い液体がビチャと鈍い音をたて、エリナの頬を深紅に染める。
座っていたヴァイオスの躰は数秒静止後、エリナの目の前で、ゆっくりゆっくり倒れていった。
ポトリポトリと剣から滴る深紅。
エリナに微笑む瞳の漆黒。
「君を捉えて離さない男はもういないよ」
「あ……あ……」
目の前で倒れているピクリとも動かないヴァイオスの躰に、震えながら伸ばしたエリナの手は男にガシッと掴まれた。
「駄目だよ、汚いものに触っては。君が穢れてしまう」
べっとりと血を吸った剣を置き、目を見開いたまま放心状態のエリナの顎に触れ、クイッと上に持ち上げる。
「血まみれの顔も美しい」
男はサファイアの瞳を覗き込み、恍惚の表情でエリナを見つめた。
「さぁ、おいで。僕の花嫁」
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